映画『すばらしき世界』という映画が2021年春に公開を控えています。
監督・脚本は西川美和さん。
この映画は『身分帳』という原案小説を、現代風アレンジした映画という作風をとっており、今までオリジナル脚本で挑んでいた西川監督にとって、初の試みです。
そして映画『すばらしき世界』の原案小説ですが、実在した人物をモデルに、13年の刑期を終え出所した元殺人犯の山川一を描く実話ベースとのこと。
モデルになった人の名は田村義明さん。
今回は映画『すばらしき世界』の原案小説『身分帳』の主人公・山川一のモデルとなった人物・田村義明さんの話が、どこまで本当なのかを調査していきたいと思います。
ストーリーもさることながらどこまで実話かも気になってしまいますよね。
それでは今回も宜しくお願い致します。
映画『すばらしき世界』のモデル山川一は誰?
佐木隆三の小説「身分帳」に基づく西川美和監督の新作「すばらしき世界」で、役所広司、仲野太賀、長澤まさみが共演しているようだ。公開は2021年春になる模様。 pic.twitter.com/yqI59vjENy (映画ナタリー)
— cinepre (@cinepre) July 8, 2020
先述した通り、原案小説『身分帳』の主人公山川一のモデルは田村義明さんです。
実はこの原案小説の『身分帳』、田村義明さんが自ら「自分のことを小説にしてほしい」と自身の身分帳を作者である佐木隆三さんに送ったことで作成されました。
この身分帳というのは、刑務所収容者の家族構成や入所した本人の経歴、過去の行い、犯罪歴、入所した後の行動についてまで記録されている、言わば自分の歴史書のようなものだそうです。
何度も何度も刑務所へ入所を繰り返した、田村義明さんの身分帳は他の犯罪者と比べても厚みのあるものだったそんだそう。
そんな田村さんがなぜ小説家佐木隆三さんに身分帳を送ったのか?
佐木隆三さんはノンフィクションを自身の調査も含めて書く小説家であり、あのオウム真理教や、埼玉連続幼女誘拐殺人事件なども作品として扱っています。
田村義明さんが佐木隆三さんに身分帳を送ったのも、経歴から見ると妥当と言えるかもしれません。
どんな人生を送られた方なのでしょうか?
なぜ、刑務所に何度も入所を繰り返すのか、、
田村義明さんの人生
西川美和監督が初めて原作ものに挑戦した『すばらしき世界』の原作『身分帳』を読み始めました。絶版だったものの、西川監督の映画化で再販された模様です。原作はJRがまだ国鉄だった頃のノンフィクション。 pic.twitter.com/6L929Ehqr0
— ノーシン (@nothin0707) November 30, 2020
続いて、田村義明さんの人生をご紹介していきます。
田村さんは福岡県福岡市生まれということになってはいますが、実際は戸籍がなく定かではありません。
芸者をしていた母親と海軍大佐の間に生まれた私生児、言わば父親が自分の子どもと認知せずに生まれた子どもだったそうです。
そして、父親と思しき人は戦争で戦死したということになっています。
その後、田村さんは孤児院に預けられましたが母親とはそれっきり。
戦後の混乱の中、迎えに来る事はありませんでした。
その後はアメリカ将校に養子として迎えられますが、戸籍がないため正式に養子縁組をすることが出来ず、その後引き取られる家々でもうまく馴染めず非行少年になっていってしまいます。
12歳で少年院に入ってからは少年院を出ては入りを繰り返し、18歳で暴力団組員になります。
暴力団から足を洗うことは出来ずに33歳で殺人事件を起こし、44歳まで獄中で過ごします。
44歳で刑務所を出てからのストーリーが、映画では原案として使われるようです。
出所後も社会に馴染めない田村さんは、東京からルーツである福岡へ転居。
田村さんのことを犯罪者だと知っても、近くにいてくれるような人たちが周りにいながら生活をし、亡くなるまでをその人々の周辺で過ごしたそうです。
殺人事件を起こしたと知っていながら側にいる人々がいる、理由はどうであれ、田村義明さんは特別な人だったのでしょう。
時として衝動的になってしまう人でありますが、真っ直ぐで素直な人柄だったそうです。
その”真っ直ぐで素直さ”が時として犯罪を犯してしまうことにも繋がるのかもしれません。
戦争によって幼少期を剥奪されたような、そんな生活は到底私たちには想像も出来ません。
田村義明の実話はどこまで再現?
西川美和監督の最新作「すばらしき世界」の原作、佐木隆三さんの「身分帳」。何かが解決されるでもなく、希望があるわけでもないのに、泣きたくなるほど人間を見たような気になる、と監督が言うほど。犯罪と生を文学に持ち込んだ直木賞作品「復讐するは我にあり」#身分帳#すばらしき世界#西川美和 pic.twitter.com/mm872XCLJH
— 挽地 信孝@すぐ出す技術@メイビーtube (@hikijinobutaka) August 16, 2020
田村義明さんの人生は小説でどこまで再現されているのでしょうか。
映画は44歳で刑務所を出たところから、スタートするようです。
しかし、映画では、44歳の令和の時代に出所したという大きな設定改変をしています。
刑務所を出てからの人間関係を中心に描かれるようなので、具体的にモデルになる人も登場するかもしれませんね!
映画では、刑務所を出た後の主人公三上正夫(役所広司さん)がテレビ局に個人台帳(昔でいう身分帳)を送り、と2人の若手テレビマンが密着取材をし番組にしようとする序盤になります。
実際には身分帳をノンフィクション小説家に送るところから始まっているので、経歴やキャラクター性は保持した別のストーリーになっている可能性もありますね。
あくまでもモデルとしてバックボーンに田村義明さんがいるだけで、全てが同じ話というわけではないようです。
オリジナルを好む監督西川美和さんが描く不安定で気性の荒いところもあるが真っ直ぐ誠実な三上正夫が見られるのではないでしょうか。
小説『身分帳』は、こちらから購入することができますよ。
小説『身分帳』を読んで映画に臨むのもオススメです。
まとめ
西川美和『すばらしき世界』試写。言葉や台詞、答えや正しさではなく、ただ花を贈ること。そこに希望を見るか絶望を見るかは観客に託されている。『ゆれる』の香川照之以来の、見てはいけないものを見てしまったというような鬼気迫る役所広司の圧倒的な存在感。過去作から一段開けた視界に立っている。 pic.twitter.com/lcS4rNaLyY
— 野本幸孝/Yukitaka Nomoto (@yuki_miriam) December 1, 2020
いかがだったでしょうか。
原案小説の主人公・山川一のモデル田村義明さんを、実話をベースにさらに現代にリメイクということで現代の時事性も問われながら元殺人犯の男の人生を描く映画『すばらしき世界』。
田村義明さんをモデルとした実話を、ノンフィクション小説をさらに設定を変えて映画化。
原案小説佐木隆三さんと映画監督・脚本西川美和さんによってかけられた、二重のフィルターが如何にして田村義明さんの魅力を引き出すのか、映画のプロットとしても新たな試みなのではないでしょうか。
原案小説の『身分帳』からはタイトルをガラッと変えてポジティブイメージの映画『すばらしき世界』にしてきたあたりも作品のストーリーに関係してくるのかもしれませんね。
モデルになった田村義明さんは既に亡くなられていますが、自分がモデルで映画になったこと、現代の人間に問いかけることで出来る人生を歩んだことをどう考えるのでしょうか。
原案小説の主人公山川一との違いを見極めるためにも、公開前に小説『身分帳』を読んでおくのもいいかもしれませんね。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。